第276話

アルファのキリアンが通話を切った瞬間、ライラはエイラに電話をかけた。

エイラはナンバー十のセキュリティコードを打ち込みながら応答した。錠がカチリと鳴り、彼女は玄関扉を押し開ける。

改装はついに終わっていた。家具はすべて所定の位置に収まり、床は午後の光を受けてつややかに輝き、塗料の匂いの名残は、革と生花、そしてようやく「家」と呼べる何かの温かな香りへと溶けて消えていた。

「エイラ!」電話越しにライラの声が弾けた。「兄貴があたしの車を盗んだの! 絶対、あんたに会いにこっそり来るために持ち出したんだわ」

「こっそりも何もない」エイラの背後から、アルファのキリアンが言った。

ライラが黙る。

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